やっかいなインプラント周囲炎

インプラントがあれば歯を失っても問題ないと思われる方は多いかもしれません。しかしインプラントにも大きな落とし穴があることはご存知でしょうか。

日本人が歯を失う原因の第一位は「歯周病」といわれています。このことからわたしたちは「歯周病」にかかりやすいうえに、あまり「歯周病」の予防が行われていないことがわかります。

また「歯周病」になるのは自然な歯だけと思われているかもしれませんが、インプラントもまた「歯周病」になります。インプラントを入れたからといって安心することはできないのです。

よって今回は、インプラントにとって非常にやっかいな「インプラント周囲炎」についてご紹介したいと思います。

インプラント周囲炎とは?

インプラント周囲炎とは?

まず、インプラントが歯周病にかかった状態を「インプラント周囲炎」といいます。一般的な歯周病と違うように聞こえるかもしれませんが、それは歯かインプラントかの違いがあるのみで、歯周病と特に変わりはありません。

そもそも歯周病は天然の歯がなる病気と多くの方が思われているかもしれませんが、ではどうして天然の歯は歯周病になるのでしょうか?

その答えは、口のなかには常に歯周病の原因となる菌が蔓延しており、それが歯の周りにある組織に感染してしまうことで歯周病になるためです。つまり歯周病とは「歯」の病気ではなく、「歯を支えている組織」の病気なのです。

その感染のメカニズムについては、すべての歯に必ずある「歯周ポケット」のなかに歯周病菌が侵入することからはじまります。歯周組織は侵入してきた菌を撃退する必要があるのですが、その際に菌に感染してしまった組織と一緒に菌を破壊しようとします。それによる炎症反応として歯肉炎があらわれます。

しかし歯周病菌が「歯周ポケット」の奥深くに入り込むと、今度は歯と歯槽骨(歯の骨)のあいだにある「歯根膜」という組織がターゲットになります。この「歯根膜」が実は歯槽骨と一心同体のようなもので、「歯根膜」が組織の破壊をはじめると、それを引き金に歯を支えている骨までもが失われはじめるのです。その結果、少しずつ歯は支えを失っていき、最終的に抜け落ちてしまうことになるのです。
これとよく似たメカニズムでインプラントもまた歯周病に感染し、抜け落ちてしまうケースがあるのです。

インプラント周囲炎の特徴

次にインプラントが「インプラント周囲炎」になるメカニズムと、その特徴をご紹介します。

まずインプラントが「インプラント周囲炎」となるきっかけは、インプラントの手入れ不足にあります。

インプラントの手入れとは、天然の歯と同様に付着した汚れを落とし、清潔にしておくことです。インプラントであれば虫歯にも歯周病にもならないと安心してしまい、あまり丁寧に歯磨きを行わなくなってしまう方は多いようです。その油断によってインプラントの周りには少しずつプラークが付着していくことになり、「インプラント周囲炎」の原因が作られます。

虫歯菌も歯周病菌も多く潜んでいるのはプラークのなかです。そのプラークは一度付着してから長い時間が経つと、唾液のミネラルを吸収していくことで歯石になっていきます。プラークが歯石に変化していくあいだにもそのなかにいる歯周病菌は増殖をし続けるため、プラークが付着したインプラントの歯周組織は次第に菌に感染していきます。そしてこの際、あまり痛みや疼きを訴えないのが「インプラント周囲炎」のやっかいな特徴なのです。

何故そうなるのかというと、インプラントは天然の歯と違い、歯の神経がないためです。それによりインプラントは異常を訴えるすべがなく、ただ静かに歯周病が進行していってしまうことになるのです。また、インプラントには天然の歯と違うところがもうひとつあります。それは「歯根膜」を持たないことです。

天然の歯の場合、歯周ポケットの奥深くに「歯根膜」があることで、歯周病菌が入り込んでもすぐに歯槽骨が影響を受けることはありません。しかしインプラントは歯槽骨と直接的に結合しているため、インプラントが歯周病菌に感染してしまうと、その影響はダイレクトにやってきます。

その結果、通常の歯周病の時よりも早く歯槽骨が失われていってしまうのも「インプラント周囲炎」のやっかいな特徴です。つまり「インプラント周囲炎」の特徴は、「静かに、そして早く進行する」というとても恐ろしいものなのです。

インプラント周囲炎の治療とは?

インプラント周囲炎の治療とは?

もしインプラントが歯周病に感染していても、自分で気づくことはまず難しいと言えます。そのためインプラントが歯周病に感染しているかどうか確認をするためには、必ず検査を行う必要があります。

その際、インプラントに問題がなければ医師によるクリーニングと洗浄を行い、ふたたび次の定期健診までセルフケアを継続してもらいます。しかもしインプラントが歯周病に感染してしまっている場合は、歯周病の進行具合によって適切な処置を行う必要があります。

まず症状が軽度から中等度の場合、インプラントのクリーニングと洗浄を行ったあと、歯周病の進行を防ぐために抗生物質やうがい薬を処方します。次に症状が中等度から重度の場合、インプラントのクリーニングと洗浄を行うほか、インプラントの周りに直接、抗生物質の薬を注入します。さらに抗生物質やうがい薬も使用し、インプラントを正常な状態に戻します。また歯周病による多量の歯槽骨の喪失が認められた場合は、外科治療を行う必要も出てきます。これによりインプラントを残すことができれば問題ありませんが、最悪の場合は摘出治療を行わなくてはいけません。

このようにインプラント周囲炎に対する治療は、おもに対策や予防がメインとなり、根本的な解決方法はあまりないということが言えます。すなわち、インプラント周囲炎は可能な限り予防をしていくことが最善なのです。

歯周病の治療はとても重要

インプラント周囲炎は通常の歯周病と比べるといかにやっかいであるかが窺い知れたかと思います。インプラントを清潔に保つことは非常に重要であり、また感染しているかどうかは検査をしてみなくてはわからないため、定期検診も絶対に欠かすことはできません。以上のことを忘れずに、インプラントを長く維持していくように努めましょう。