インプラントによるリスクの一つ上顎洞炎とは

上顎洞炎は、鼻の横にある上顎洞というところに生じる炎症のことです。鼻と上顎洞は繋がっており、鼻の炎症が原因で上顎洞炎を起こすことがあります。

一方、歯が原因で上顎洞炎を起こすこともあり、インプラントがその原因となることもあります。

■上顎洞炎ってなに?

上顎洞炎ってなに?

上顎洞とは、全部で4つある副鼻腔の一つです。副鼻腔とは、鼻腔の周囲にある粘膜に覆われた空洞のことです。上顎洞以外の副鼻腔には前頭洞(ぜんとうどう)・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)・篩骨洞(しこつどう)があります。

鼻腔とこれら副鼻腔は全てつながっており、鼻から吸い込んだ空気は、副鼻腔内に流れ込むようになっています。

上顎洞は、鼻腔の隣、上顎骨の上方、眼窩の下方にある骨の空洞のことです。上顎洞の底を上顎洞底(じょうがくどうてい)、上顎洞の横側の骨を上顎洞側壁(じょうがくどうそくへき)と言います。

上顎洞は、4つある副鼻腔のうちで最も大きい副鼻腔です。副鼻腔が存在している理由は、よくわかっていないところもあります。仮説の一つには、脳が発達して重くなった人間の頭を軽くするという意味があると言われています。

上顎洞炎とは、上顎洞に起こった炎症のことです。上顎洞は、鼻腔の左右両方にあります。一般に左右両方に上顎洞炎が起こった場合は、鼻に原因がある鼻性上顎洞炎、左右のどちらか一方だけに生じた場合は、歯に原因がある歯性上顎洞炎と言われています。

ただし、片側性であっても鼻性上顎洞炎であることもあり、必ずしもそうであるとは限りません。上顎洞は副鼻腔の一つですから、上顎洞炎も副鼻腔炎と呼ばれることもあります。なお、慢性の副鼻腔炎のことを蓄膿ということもあります。

■上顎洞炎の原因ってなに?

上顎洞炎の原因は、鼻性か歯性かで大きく異なってきます。

■鼻性上顎洞炎の原因

鼻性上顎洞炎では、風邪やインフルエンザなどのウィルス感染や細菌感染、そしてアレルギー性鼻炎が原因の場合が多いです。

風邪などにより鼻に鼻水や鼻づまりなどの炎症が起こります。この炎症が、鼻から副鼻腔に達し、副鼻腔炎を起こします。また、アレルギー性鼻炎が長びいた結果、副鼻腔炎を起こし、膿が溜まったり、粘膜が腫れて厚くなったりすることもあります。

■歯性上顎洞炎の原因

むし歯や歯周病が原因で上顎洞炎を起こすことがあります。むし歯が進行していくと歯の神経が腐ってきます。そして歯根の先に膿をためるようになります。

歯周病の場合は、歯周ポケットという歯と歯ぐきの隙間の部分から歯周病菌が入り込み、徐々に歯槽骨という歯を支えている骨を溶かし、膿をためるようになります。

上顎の奥歯の場合は、その上方に上顎洞があるので、元々骨が薄いです。むし歯や歯周病によって膿がたまってくると、その分骨の厚みがさらに薄くなります。その結果、むし歯や歯周病の炎症が上顎洞に達して、上顎洞炎を起こすようになります。

また、上顎の奥歯の抜歯をしたところ、上顎洞底を突き抜けて、口と上顎洞が繋がってしまった状態、いわゆる口腔上顎洞瘻を形成したり、歯根、場合によっては歯そのものが上顎洞内に迷入したりすることでも上顎洞炎は生じます。

歯性上顎洞炎が片側性であることが多いのは、このように上顎洞の下方にある歯や歯周組織が原因となるためです。

■上顎洞炎の症状ってなに?

■鼻性上顎洞炎

鼻づまりや黄色や緑色の鼻水が出てくるようになります。この黄色や緑色の鼻水は、上顎洞内にたまった膿です。

歩くと、鼻の横に響く様な違和感を感じ、眼の奥が重い感じがすることがあり頭痛を生じることもあります。

■歯性上顎洞炎

鼻性上顎洞炎の症状に加えて、歯に炎症症状が生じます。具体的には原因の歯で噛むと痛みを感じたり、歯が浮いた様な感じがしたりすることもあります。歯ぐきが腫れて、触ると痛くなることもあります。

■上顎洞炎の治療法ってなに?

上顎洞炎の治療法ってなに?

■薬物治療

抗菌薬を使って、炎症の緩和をはかります。慢性化した上顎洞炎の場合、マクロライド系抗菌薬の長期間にわたる投与が行なわれる場合もあります。
痛みは、消炎鎮痛薬を使って取り除きます。

■歯科治療

歯科治療
歯性上顎洞炎の場合、原因となった歯の治療を行ないます。歯の神経の治療で改善出来る場合はいいのですが、そうでない場合は、原因の歯を抜歯することもあります。

上顎洞内に歯根や歯、インプラントが入り込んだことが原因の場合は、これらの異物を取り除く治療が必要となります。口腔上顎洞瘻を形成している場合は、閉鎖術をして孔を塞ぐようにします。

■上顎洞根治手術

外科手術によって上顎洞炎を治す方法です。上顎の犬歯の上方の歯肉に切開を入れて、その部分の骨に穴をあけてそこから腫れた上顎洞粘膜を取り除くCaldwell-Luc法(コールドウェルーラック法)と、鼻の底の部分に近いところまで広範囲に骨を削るDenker法(デンカー法)があります。

■インプラント治療による上顎洞炎発症のリスクについて

■上顎洞底の厚みとインプラントについて

上顎の奥歯を失った時に、インプラント治療を行うことがあります。インプラント治療とは、フィクスチャーとよばれる人工歯根を骨に埋め込み、その上に上部構造とよばれる差し歯を作って、噛み合わせや見た目の回復を図る治療法です。

この時、インプラント治療の成功のカギを握るのが、インプラントを埋めこもうとする場所の骨の厚みです。

実は、歯槽骨とよばれる歯を支えている骨は、歯を失うと吸収が始まり、どんどん減っていきます。これは歯が無くなることで、歯槽骨が存在する必要性を失うからです。

上顎も同じで、歯が無くなることで、奥歯の部分の歯槽骨が薄くなってくると、上顎洞底との厚みも減ってきます。インプラント治療では、骨にインプラントを埋め込みますので、上顎洞底の骨の厚みが少なくなっていると、インプラント治療が失敗するリスクが出てきます。

そこで3つの選択肢がでてきます。
●通常のインプラント治療
●サイナスリフト
●ソケットリフト

通常のインプラント治療
上顎洞底ギリギリのところまでインプラントを埋め込みます。インプラントの埋め込む深さが短いと、インプラントが安定しなかったり、抜けてしまったりすることがあります。

サイナスリフト
これは、上顎奥歯の粘膜に切開を入れて、上顎洞側壁を開削し、上顎洞粘膜と上顎洞底の間に人工骨を入れる手術をする方法です。人工骨を入れることで、人工的に上顎洞底の厚みを確保します。その上で、インプラントを埋め込みます。

ソケットリフト
これはサイナスリフトと異なり、粘膜に切開は入れません。インプラントを埋め込む際に、わざと上顎洞底に穴を開けて、上顎洞粘膜を少し持ち上げてより深くインプラントを埋め込む方法です。

■インプラントによる上顎洞炎が生じる原因

3つの選択肢のどの方法であっても、全て問題なく術式を完了できれば、上顎洞炎を起こすことはありません。

しかし、上顎洞内にインプラントが突き抜けてしまったり、上顎洞内にインプラントが落ち込んでしまったりすると、上顎洞炎を起こします。

また、インプラント治療時に上顎洞粘膜を傷つけてしまうだけでも、その傷から上顎洞炎を引き起こすことがあります。

すなわち、インプラント治療時に上顎洞の粘膜に傷をつける様なことがあれば上顎洞炎を生じさせてしまうのです。

■まとめ

上顎洞炎は、副鼻腔のひとつである上顎洞に起こる炎症です。上顎洞炎を起こすと、鼻から膿が出たり、鼻が詰まったりします。それだけでなく、眼の下の痛み、頭重感といった症状もあります。

上顎洞炎を起こす原因は、風邪やアレルギーもありますが、歯が原因で生じることもあります。

歯が原因となる場合は、むし歯や歯周病がほとんどですが、インプラント治療後に上顎洞炎を起こすこともあります。

インプラントにより上顎洞炎が起こるのは、上顎洞にインプラントが突き抜けたり、上顎洞粘膜を傷つけたりするのが原因です。このような場合、たいてい上顎洞底の骨の厚みが薄くなっていることが多いです。

インプラント治療後に上顎洞炎を起こさないようにするためには、治療前に骨の厚みや形状をしっかり確認しておくことが大切です。その上で、必要とされるインプラントの長さを十分確保出来るかといったことを主治医の歯科医師と、治療前に相談しておく必要があるでしょう。